赤十字国際委員会(スイス・ジュネーブ)のフローレンス・ナイチンゲール記章選考委員会より、5月12日に「第50回フローレンス・ナイチンゲール記章」の受章者の発表があり、地域が連携して退院後の患者を支える体制整備に向けた功績が認められ、当会の河野順子理事が受章しました。
https://www.jrc.or.jp/press/2025/0512_046942.html

■主な功績:
河野氏は、病院を退院した後も住み慣れた地域で必要な医療が受けられ、最期まで尊厳のある一人の人間として自分らしく生活できるように、現在の地域包括ケアにつながる「退院計画」のための多職種・地域連携、在宅医療推進に向けた地域の受入れ体制の構築に取り組んだ。

2000年から導入される介護保険制度を見据え、退院後の患者・家族の生活やライフサイクルを想定した看護ケアの計画立案・実施・評価という患者個別の側面と退院後の療養を担う保健・医療・福祉といった地域資源の活用による近隣社会のネットワーク化という側面を推進するため、氏は大田原赤十字病院(現:那須赤十字病院)と国際医療福祉大学の共同研究事業により、地方にある中核都市の特徴を踏まえた「退院計画」の構築に率先して取り組み、退院後の患者の「医療の質」を確保するための多職種連携・地域連携を強化した。

氏は同院を退院した後の生活や住環境などに着目し患者の援助のために立案する「退院計画」を看護師が主導しながら多職種によるチームアプローチで作成し、その効率的・継続的運用に努めた。さらに患者を受け入れる地域の連携体制づくりのため、地域の保健医療福祉の専門職との連携を強化するとともに、地域住民が参加する学習会・講習会を開催して、在宅療養のための知識・技術の普及に努めた。退院後の患者がその人らしい生活を取り戻せるようにと、氏が強い信念を持って取り組んだことにより、地域関係者の間に「地域が一体となり患者のための支援体制を構築する」という信頼感・連帯感の意識が高まり、退院した患者が社会の中で一人の人間として普通に生活できるWell-being(ウェルビーイング)の実現にもつながった。

氏が実践した退院計画への取り組みは、環境が類似する多くの地域において有益となるものであり、各地での講演等を通じて、全国へのさらなる普及や後進の育成に努めた。

【フローレンス・ナイチンゲール記章の概要】
同記章は、紛争下において敵味方の区別なく負傷者を保護する役割を担う赤十字が、1907年および1912年の赤十字国際会議において、顕著な功績のある世界各国の看護師を顕彰し、授与することを決定したものです。

フローレンス・ナイチンゲール氏の生誕100周年を記念して、1920(大正9)年に第1回の授与が行われ、それ以来、隔年でフローレンス・ナイチンゲール氏の生誕の日にあたる5月12日に赤十字国際委員会(ICRC)から受章者が発表されています。

また、同記章は、鍍銀製アーモンド型メダルで、表面は燭(ともしび)を手にしたフローレンス・ナイチンゲール氏の像と「1820~1910年フローレンス・ナイチンゲール氏記念」の文字があり、裏面には受章者名と、ラテン語で「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」と刻まれています。

【フローレンス・ナイチンゲール記章の受章資格】

現在、医療機関や看護教育施設等の業務に従事しているか、または過去に従事した経験のある保健師、助産師、看護師、もしくは篤志看護補助者のうち、以下の条件のいずれかを満たしている者であることが受章資格とされています。

(1)平時もしくは戦時において、次のような事項に関して顕著な働きをした者。
 ア 傷病者や障がい者、または紛争や災害による犠牲者に対して、果敢に献身的な看護活動に従事した者。
 イ 公衆衛生や看護教育の分野で、模範となるような活動に従事した者。またはこれらの分野で創造的かつ先駆的な精神のもとに活動した者。
(2)国内災害救護、国際活動等の事業において、果敢かつ献身的に活動し、推薦に値すると判断される者。
(3)献血思想の普及啓発、老人看護及び障がい者への理解促進を含む保健衛生活動、看護教育活動、救急法等講習普及事業等においても、献身的に永年その業務に携わり、その実績から高い評価を得られると判断される者。